「 くび・肩・腰・腕・あし 」の、つらい痛み。頸肩腕症候群、慢性腰痛
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芝大門クリニック
「ALS」ではありません
筋萎縮性側索硬化症 ALS(amyotrophic lateral sclerosis) 、ではない
上下肢の脱力、筋線維束攣縮から「ALS」を懸念した症例 芝大門クリニック・くび肩ネット 渡辺譲二
2013年3月の(症例検討・勉強会に提出した)レポートです。
関連ページ【 難治化「頸肩腕症候群」の体験記  】もご参照ください。

目次
誤診、自己診断
「筋線維束攣縮」
ALSはごく稀
鑑別診断
全身慢性痛でも類似症状
最近のトピックス

考察と課題
筋線維束攣縮はなぜ起きるのか 
腱反射亢進が伴うのはなぜか
腱反射は、個人差がとても大きい
深刻な全身症状が、「痛み」を後景に退ける ?

ALSではないが、懸念していた症例
症例 (H・Yさん、30台後半男性)
症例 (KHさん、50歳女性)
共通点、特徴
治療は簡単じゃないが、必ず改善・治癒できる
誤診、自己診断
「脱力、筋肉のピクピク」をキーワードにすると、ALSとの自己診断、誤診に陥りやすい。

過去にもたびたび同じような不安を訴えた受診例があったが、ほぼ改善してきた。Web検索、テレビの医療バラエティなどのおかげで、似たような懸念を持つ患者が増えている。
医学部・医大では、毎年のように自分はALSではないかと相談に来る学生がいて、笑ってたしなめられると、言われている。

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「筋線維束攣縮」について
筋肉の一部がぴくぴくと収縮し、本人はそれに気がつく、さらに体表から見える、触っていると感ずるレベルの、筋肉の意図しない興奮である。ただし、けいれん、関節の動きになるような、筋肉の不随意的興奮(運動)とは異なる。これは、正常でもたびたび起きることである。子どもや犬猫などのペットを長時間抱いて触れていると、時々起きることがわかる。
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ALSはごく稀
(1万人に一人以下、発症は年間10万に一人 日本では8000−1万人の患者)である。
以下列記の理由も加えて、中途半端な知識・啓蒙は不安をあおるだけになるので、注意すべきである。
@確定診断が難しく、違うという確定診断も困難。
A類似疾患との鑑別に実際的意義が少ない。
Bどの段階で発見、診断されても、予後があまりかわらない(有効な治療が無く予後悪い)。
C原因不明であり、予防方法もわからない。
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鑑別診断
教科書では,、鑑別すべき疾患として、以下があげられる。

1)金澤一郎(「内科学」、医学書院)は、
1、変形性脊椎症を中心とする脊椎の疾患 2、神経変性疾患 3、筋変性疾患 4、ポリオ後症候群

2)ウィキペディアでは
1)変形性頚椎症 2)HTLV-I関連脊髄症(HTLV-1 associated myeloathy、HAM) 3)脳・脊髄の腫瘍 4)脊髄動静脈奇形 5)ALS以外の運動ニューロン疾患

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全身慢性痛でも類似症状
慢性痛(頸肩腕症候群、慢性腰痛、線維筋痛症)、慢性疲労の患者では、この症状(四肢脱力や筋肉のピクピク)が現れることが珍しくない。 他に、筋クランプ(つる、こむら返り)、腕などが部分的に締め付けるようにぎゅっとなる、などが起きることも多い。

これらの症状は、慢性痛治療(当院ではレーザ光治療による、リンパ鬱滞の解消)により、改善(根治的に)するので、心配する必要はない。

今後も、神経内科、整形外科を同じような懸念で受診する患者は増えるだろう。しかし、実態としてとても多いのは、「慢性疼痛に伴う、脱力、筋力低下、だるさ、筋線維束攣縮」であることを、医師、医療関係者も含めて、注意喚起したい。

旧来の常識のままでは、「全身脱力、筋肉れん縮」の訴えに対し、ALSや、上記の教科書的「難病」を考えただけでは、「検査の繰り返し、効果のない治療」から抜け出せないことになる恐れがある。

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最近のトピックス
「ALSとして診断されてきた症例のかなりは、実は外傷(脳しんとうなど)性の障害ではないか」という報告がある。
 ALSは、フットボール選手、野球選手などに 平均の10倍近い発生率。血液生化学検査、解剖学的所見などでも、ALSと異なる群があることがわかってきた。
 ルー・ゲーリック自身も、ルー・ゲーリック病(ALSの別名)ではなかった可能性が高い。 
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考察と課題
筋線維束攣縮はなぜ起きるのか 
 (慢性疼痛でも起きるのはなぜか)
ALSでは、運動ニューロンの変性、消失により、諸レベルで神経筋単位の組み替えが大規模に起きる。
正常レベルでの神経の自然の興奮(自発興奮)は、ニューロンの部分的消失や、それに伴う回路の変更などに伴って、増える、筋肉側の興奮性が高まるなどの、過渡的な変化が起きるのでは無いか。
 そもそも、脳(神経系)は、筋肉だけでなく、身体の各種機能を、頻繁に、実害がない微弱レベルで働かせている。夢を見たり、目が動いたりも同じことだ。試し運転をし、微調整するという意味もあるだろう。筋線維束攣縮にも病的な誤動作という意味と、減弱しつつある制御系での試し運転・再調整という意義があるかも知れない。

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腱反射亢進が伴うのはなぜか
(仮説) 上位ニューロン(脳)の変性(脱落、消失)があると、代償的にも、脊髄以下レベルでの運動制御が相対的に重要になり、反射が亢進する。あるいは脊髄反射を抑制しているより上位のニューロン活動による抑制が低下し(脱抑制)、反射が亢進する。

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腱反射は、個人差がとても大きい
正常・健康人でも、痩せているひと、女性などに、神経学的異常ではなく、とても腱反射が強いひとがいる。全身の痛みや、何らかの広範囲の症状がある場合は、過敏になっていることも多い。病的かどうか(さらに精査が必要。診断根拠とする。)の判断は難しい。
同じひとで左右差が明確な場合は、どちらかに異常があると疑うことはできる。
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深刻な全身症状が、「痛み」を後景に退ける ?
疼痛をあまり伴わなず、「四肢の脱力、だるさ」を主訴とする病型があるのではないか(頸肩腕症候群、慢性腰痛、線維筋痛症)。その場合の治療方針はあるか。
治療が進むと、部分的に痛み症状が強くでることがある。「むしろ、改善のサイン」と説明している。 実際にもそのような経過をたどる。また、このように治癒過程で局所的痛みが目立つ、また部位も次々と変わることは、慢性痛の最重症からの改善、痙性斜頚の治癒過程でも良く起きることである。

痛みは、それらの疾患の主訴ではあるが、重症化・全身化すると、むしろ、「動けない」「ただただつらい」「重苦しい」「どこが痛いのかわらかない」「恐ろしい」という自覚症状が前面に出てくることが多い。
逆説的だが、そういう患者さんでは、治療による改善が進んで、あちこちの痛みが出てくる時期に、「人並みに痛みがわかるようになって良かった」と喜ぶこともあるくらいだ。

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ALSではないが、懸念していた症例
症例 (H・Yさん、30台後半男性)
事務系専門職 
 左右上下肢のだるさ 脱力感 コリ
 24年(昨年)11月から だんだん
 特に下肢 立位で疲れる
 内科、漢方医受診した  外傷などの既往無し
 (平成22 「痙性斜頚」 しばぞの診療所・渡辺譲二医師外来を受診 すぐに良くなったという既往歴あり)
 知人、Web情報から「ALS」を強く懸念

診察
腱反射強い 病的反射無し
疼痛はあまり無い(本人主訴ではない)
頸肩腕症候群との診断。「下肢症状がむしろ強いので、典型的ではないが」 「ALSの心配はない」と説明
低出力レーザ光治療(数回)で下肢症状が改善し、その後あまり問題なくなり、終了。
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症例 (KHさん、50歳女性)
関連ページ【 難治化「頸肩腕症候群」の体験記  】もご参照ください。
 主訴 左右とも上下肢の脱力 
 腱反射強い 病的反射無し
 既往歴 平成1年 外傷(交通事故)、 平成13年 四十肩 

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共通点、特徴
痛みが目立たず、脱力、筋力低下が主訴。外見的には問題なく、筋萎縮も無し。
 腱反射は強め。左右差無し。
 左右、上下肢ともに症状がある。ただし触診では、コリ・しこりは、同じではなく、差がある。
 Web検索や、医学情報入手などに傾注し、「ALS」を強く懸念し、神経症気味、抑うつ状態になっている。
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治療は簡単じゃないが、必ず改善・治癒できる
現在までのところ短期の劇的改善には成功してないが、低出力レーザ光治療で、緩やかな改善は得られている。
しかし、残る症状について悲観し、不安をぬぐえないという傾向もある。
「痛み」を主訴とする場合は、それが全身・広範囲ではあっても、左右差、部位差がみつかり、カギと推定できる部位から治療を進められる。しかし、上記のようなタイプでは、つかみ所がなく初期の治療は、迷走しがちである。また、痛みは、消えたり、他部位が痛くなるなどの変化が、自覚しやすいという面もある。
ということで、治療側(当方)にも、患者側にも、速やかで効果的治療を進めにくい、実感しにくいという難点があるが、治癒・改善は必ず期待できる。

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